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本「走らなあかん、夜明けまで」

「走らなあかん、夜明けまで」

著者 大沢在昌
文庫:378p
サイズ(cm):148x105
出版社:講談社
ISBN:4062633973(1997/03)


いきなりドン! と目に飛び込んできたタイトル。どうしようもなくかっこええ。
ぼくは値段も見ずにレジへ持っていったが、例えレジで「5000円です」と言われても買っていただろう。
このタイトルの一言には、それだけの価値がある。

物語は、東京から仕事の都合で生まれて初めて大阪へやってきた主人公の坂田が、右も左もわからない大阪の街で明日の会議に必要なアタッシュケースを盗まれてしまうところから始まる。
ただかばんをパクられただけ。災難の火の粉は最初は小さかった。しかし、様々な事情からどんどん深みへとはまっていく。
極道、やくざ同士のメンツをかけた争いにも巻き込まれ、いつのまにかかばんのことはどうでもよくなる程の大災害へ・・・・。

タイトルからすでに大阪の匂いが漂っている通り、主人公の坂田以外、登場人物のほとんどが大阪生まれの大阪育ちという設定だ。そしてまた、各シーンの舞台も大阪の街ばかり。ミナミ、キタ、通天閣、大国町、地下鉄御堂筋線、天王寺、鶴橋、十三、東梅田・・・・。
あまりにも心地よい大阪弁と、「まさにここが大阪だ!」と思われる街ばかりを背景にしているところに、作者は大阪出身なのか? とプロフィールを確かめたほどだった。
実際には作者は名古屋出身。東京と大阪の間にあるという土地柄で育ったのも影響してか、東京と大阪の文化的ギャップについて多く描かれているのも楽しい。

ページ数は約400ページあったが、そんなことはまったく気にならず一気に読み終えてしまった。いや、書籍にはあまりない大阪弁での文章をもっともっと読んでいたかった。
会話文が多いからガンガン読み進んでしまう。
関西在住、もしくは普段本を読まない若い人たちには是非読んでみて欲しいと思う。

いやしかし、主人公の坂田が「かわいかっこいい」。
おとなしいキャラクターなはずなのにかばんを返してもらおうとやくざの組事務所に一人で訪ねたり、空手使いのやくざに殴られ回し口から血が出ても「返して下さい!」と声を張る。
その姿に、「諦めるのは簡単だ。だからといって力の強い者の言いなりにはなりたくない。言いなりにならなければ災難に巻き込まれるのはわかってる。けど、それでも嫌だ」
そんな根性ある、力強い言葉が聞こえてくるようだった。
物語の全ては坂田が大阪に着いた夕方から翌朝の会議が始まるまでの一夜の出来事だ。夜更けから夜明けまで、常に坂田は大追跡、大爆走を繰り返す。
読んでいる間、常に「走らなあかん、夜明けまで」と坂田に叫び、応援してしまっていた。

大好きなシーンがある。これはぼくが大阪で生まれ大阪で育ったからだと思うけど。
真弓と坂田が通天閣の下で、通天閣周辺の街についてしゃべっているシーンがある。
「大阪らしいとこや」真弓が言った。
「どういうところが?」坂田が聞く。
「貧乏たらしいけど、しぶといんや」
「・・・・」
この本を読んだ当時、ぼくは通天閣のすぐ近くに住んでいた。そういうシチュエーションも影響したとは思うけど、実際、家を出て歩いていても同じことを思う。

あぁ〜、あかん。今年、大阪出ようと思ってたのに、この本読んだら大阪離れられへんわ。
まことに愛する作品である。


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