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〜過去の「情熱の言葉」は以下より〜

2007.05.05

2007.07.29

銀杏BOYZ
あいどんわなだい
2007.12.21
夜に 2008.1.13
2008.1.30
未成年 2008.2.4
見知らぬ風景 2008.4.6

- おっさんの勝ちやな-

町の自転車屋。
街のじゃなく、町のな。ちゅーか、街には自転車屋はほとんどないか。
とにかく、ここ何年も、町の自転車屋には行ってなかった。
そんなおれだったが、一昨日ひさしぶりに行ったのである。

おれの愛チャリである「ソクラテス」が強姦に襲われた。
夜の11時、おれはソクラテスの変わり果てた姿を見て驚愕するしかなかった。
「あぁぁぁ・・・・。どないしたんや。誰にやられた?」
ソクラテスは答えなかった。男前なやっちゃ。ちゅーか、チャリや。返事できるわけないか。
ソクラテスの両足は完全にいかれてた。
前、後、両方のタイヤの虫ゴムがなくなっていてスカスカになっている。
最初は怒り狂っていたが、しばらくして思った。
「誰がやったんかわからんけど、おもんないやっちゃなぁ」
それは、おれならもっと笑わせようとするぞ! ということだった。

おれもイタズラは日常茶飯事のようによくやった。店の看板蹴り回したり、車の上にうんこしたり。チャリではサドルをパクっていた。たぶんそれが一番こたえるやろうということがわかっていたからだ。
なんて、クソなガキだったんだろうと今思う。
おれがイタズラにユニークさを求めたのは、サドルを取るだけじゃなく、取ったサドルを近くに置き捨てたことだ。
チャリの持ち主は見つける。「あった!!」そう、ホットするわな。
けど、サドルを取ってみたら「あぁぁぁぁぁ!!!」や。
白の油性マジックで「ハハハハ!!!」とか書いてある。
むかつくやろうけど、ちょっと笑うかもしれんやろ!?
そんな風に、ちゃんと考えて笑えるようにイタズラしてた。
だから、イタズラするんやったらもっと知恵絞らんかいや、と思ったわけや。
けど、イタズラはしたらアカンで。
一応、上に書いた話は嘘やということにしとく。

そんな話はさておき、とにかくおれは愛チャリのソクラテスを修理してもらう為に近所の町の自転車屋に行った。
ひっそりとしていて薄暗く、全然目立ってない。
外から近づきながら見ると、おっさんは黙々とバイクを修理している最中やった。

「すいませ〜ん。虫ゴム新しいの入れて、空気入れてもらえまっか」
おっさんは一言も返事することなく、無口にソクラテスをひっぱった。
パンクのチェックをし、大丈夫と判明してから、新しい虫ゴムをさして空気を入れた。
その間、おれは静かに様子を眺めていた。
「うぅ〜ん、おし」と息を吐きながら額に汗をかいているおっさん。
そんな姿を見ていて、そしてまた、冴えない、商品のチャリやバイクがほとんどない間違いなく流行っていない潰れかけ寸前の匂いのする店内を見ていて、金のことを考えていた。
おれが払う金ちゃうぞ。おっさんの経済状況や。
「これで一日何ぼ稼げるんや? ちゃんと毎日客来てるんかいや?
 1000円以上は取ってくれよ」とな。

修理が終わった。ソクラテスは瞬時のうちに息を吹き返した。
「おっちゃん、何ぼや?」
「500円や」
それを聞いておれは「あちゃー」と思った。「マジかい・・・・、1000円取ってくれよ・・・・」
おれは財布から1000円札を取り出し、おっさんに渡した。
「ツリいらんで」
そう言おうとしたが、止めた。
ちゅーのは、おっさんにはプライドがあるから怒りよるやろう、そう思ったからや。そんな顔しとる。信念持ってるええ顔してるんや。
「いつか、チャリ買おう」
おれは心の中でそう言って、おっさんから500円玉を受け取り、自転車屋を出た。

元気を取り戻したソクラテスに乗りながら、おれは思っていた。
「けど、何や、おっさん幸せそうやったな」

商店街、町の果物屋、自転車屋、駄菓子屋、本屋・・・・。
どんどん数が減ってきとる。
なんやろう、この胸ズキズキする思いは・・・・。
おれには何もでけへんやろう。そういう場所で物を買うこと以外には何もでけへん。でも、めちゃめちゃがんばって欲しいと思う。心の底から応援する。

近所の駅に着いた。
ソクラテスを見ながら思った。
「今日も虫ゴムいかれてもええかもな。おっさんに会えるしな」

「でかくならんでもええな」
そんな思いになっていた。
勝ち組、負け組、何が勝ちなんやろう? おれにはクーラーの効いた社長室で葉巻を吸っている成金よりも、手油まみれになってしみ込んでいるおっさんの方が勝っているように思える。

それは、
「おおきにな」
と唯一言ったおっさんの表情は最高にかっこ良かったから。

マル 2004.6.29
- 我、ここにあり-

普段はアホな男である。
小学校の頃はうんこを宝物として基地に保存していたほどのアホな男である。
大人になってもクラブの中でケツを出すほどのアホな男である。

普段は何もできない男である。
一人の女 も幸せにできない何もできない男である。
仕事も人並み以下にしかできない何もできない男である。

普段はみんなから心配されるほど、しっかりしていない男である。
みんなに将来のことを心配されて初めて「ヤバ!」と気付くような、しっかりしていない男である。
みんなから心配されるほど感情の起伏が激しく、感覚だけで生きているような、しっかりしていない男である。

金もない男である。
運もない男である。
才能もないのに夢を追いかけている男である。

が、しかし、
HEY!BABY!!
そんなおれでもここにいる。
君はそこにいる。

情けないおれであるが、
友達や恋人が崖っぷちに立った時、ファインプレーできる男であればいいと思っている。

石丸健、やっぱりここにあり、というような。
おれは、だから今ここにいる。

マル 2004.7.14
- おれVSおれ-

深夜、部屋のメインの電気は消えている。
暗い。が、まったくの暗闇ではない。
枕元にある読書灯がほのかに付いている。

そんな中、おれは鏡の前に座って自分と向き合っている。

へこんでいるわけではない。
だからといって、鼻毛を処理しているわけではない。
また、「この世で一番かっこいいのは誰だい?」なんてナルになっているわけでもない。

オレンジ色に光る読書灯。そのほのかな光で、鏡の中に何か妖しく自分の顔が映っている。

さぁって、始めようか・・・・。

おれが昔から、具体的に言えば、夢や目標という言葉を持ち始めた15歳の頃から時たまやっていることだ。

鏡の中の自分を真剣に見つめる・・・・。
鏡の中にいる自分へ、声を出して問いかけた。

「おい、お前。
何がしたいんじゃ?
おいこら、お前、ホンマは何がしたいんじゃい?
ビビっとたらアカンぞ。
ほら、言わんかい。
お前、何したいねん?」

鏡の中のおれからは何も返事がない。
ビビっとる。言い訳考えとる・・・・。

「早よ、言わんかい!
ほら、言え!
今、やりたいこと全部やってるわけちゃうやろ?
ほら、曝け出せ!
何がしたいねん?
ほら、言えって。
お前は何がしたいんじゃ!」

「ほら、もう口から出かかっとるやんけ。
ほら、言うてまえ。
何も恥ずかしいことなんかあらへん。
デカイ声で叫んでまえ!
言えって。ほら、ほら、言うてみろ!
お前は何がしたいねん」

自分で自分をあおった。
常識という名の枠から自分を出して、おれはこのやり方でこれまでいろんなことを叫んだ。
一人、薄暗い部屋の中でな。
だから、ちょっとアブナイ奴みたいやけどな。

クレイジーなやり方かもしれん。
でも、自分の 心の奥底にある感情は自分ではまったく見えないものである。
その感情を出してくる為には、この方法がベストやった。

しょうもないことをいっぱい叫んだ。
「ベットの上で攻められたい!」とか、
「雨の中を走りたい!」とか。
けど、そんなしょうもないことでも、その時のおれには全て新発見の自分の感情だった。
そして、そんな中で、人生を賭けてもいいものが見つかった。

これをやった日は、いつも興奮して眠れなかった。
人生はめちゃくちゃ楽しいものであるだろう、と心の底から感じたからだ。

マル 2004.7.20
- こんな感じで、陽はまた登る-

感じる程に都会の空気とは違っていた。
空気が澄んでいる。
空には満天の星が輝いている。
物音一つしない静かな町、静かな夜。
ある一つの音を除けばだが・・・・。

ゲコゲコゲコ・・・・、ゲコゲコゲコ・・・・、
ゲーコ、ゲーコ、ゲコゲコ・・・・。
半端じゃない。まるで蛙の合唱隊だ。

おれは右側が田んぼ、左側が中学校の校舎らしき建物の間の道、アスファルトはほとんど舗装されていない道をチャリンコで走っていた。
右側の田んぼは向こうの端が見えない程にでかい。
街灯なんてありはしない。電柱すらないんやからな。
夜の11時。今日という一日ももう終わろうとしている。
「早いな」
良くも悪くも、いつもこの時間はそればかりを思う。
「それはおいといて・・・・、
めちゃくちゃ 蛙の鳴き声がうるさいがな」

走るチャリンコを止めた。
左側の中学校の校舎の外壁にもたれかかる。
煙草に火を付けた。
いつも以上にライターの火の明かりが目立つ。
あの頃、冬でも半ズボンをはいていた頃のキャンプファイヤーの炎を見た時のように、火に釘づけになった。
「ふぅー」
おれはめいいっぱい煙草を肺に入れ、ゆっくりと煙を吐いた。
うんこちゃん座りをしながら斜め上を向けば、夜空に星が輝いている。

「あかんな、おれは・・・・」
なんや急にそんなことを思い、胸が苦しくなった。この場のシチュエーションがロマンティックに、いや、感傷的な気分にさせていたのかもしれないが、何か自分の情けない部分ばかりが頭の中に浮かんできた。
「おれは何て自分勝手な奴なんや」
「友達、もっと大切にせえよ」
それだけでなく、将来に対しても不安な気持ちが込み上げてくる。
「おれ、ずっとフラフラしたままいくんかな」
「夢ばっかりがむしゃらに追いかけて、何か大切なこと見過ごしてないか、おれ・・・・」

自分がすごく小さく思えた。
背は小さいけど、そういう小ささちゃう。「何もできない奴」という小ささや。
ゾクッとした。
お化け見たわけでもないのに、背筋がピクついた。

そんな時、現実に戻された。

ゲーコ、ゲコ、ゲコ。
目の前の見渡す限りの田んぼから、さっきの蛙合唱隊のうちの一匹だろう蛙が鳴いた。
おれは田んぼを見つめた。
ゲーコ、ゲーコ。
一匹の蛙だけが鳴いている。
ゲーコ・・・・、 ゲ!ゲホ!!
「? なんや、今の音・・・・?」
しばらくしてもそれ以降、蛙の鳴き声はいっこうにしない。
「おいおい、もしかして、鳴く天才の蛙先生が、のど詰まらせて鳴くのしくったんちゃうやろな?
おもろいやんけ、ダメ蛙」
おれは目の前の田んぼを見つめながら、クスッと笑った。

おれはその場を後にし、再びチャリンコに乗った。
しばらくして、三度、蛙の合唱隊の鳴き声がどこからとなく聞こえてくる。
おれはダメ蛙を思い出してフッと笑った。
「大丈夫や、おれ。笑いながら生きていける」
そう思えた。
思ってもいなかった。
まさか、蛙に助けられるなんてな。
「ハハハハ!!」
しかしその後、すぐにおれは真顔になった。
「ありがとう、蛙」
口から言葉となって出てきていた。
どんな時でも誰かが側にいてくれている。

「どうでもええけど、あのダメ蛙、オスやったんかな、メスやったんかな?
メスやったら是非付き合って欲しいやんけ」
早くもおれはいつものアホに戻っている。

マル 2004.7.28
- いつの日か-

おれはとある花火大会に来ていた。約20万人、人、人、人で会場はごったがえしている。
打ち上げは夜8時前。今は6時で、まだ2時間もある。
おれは女の子を連れ、場所探しを始めた。
どこから打ち上がるのか、この花火大会にはお互い初めて来たのでそんなことはわからないが、適当だと思われる場所を確保し、二人でビニール製のシートを引いた。
「ここで見れるかな?」
「うーん、どやろ?」
「まぁ、えっか」
「うん、見れると思うし。
 
それより何か飲む?」
「そやな、 ウーロン茶がええな。ちょっと腹減らへん?」
「 じゃ、ついでにたこ焼き買って来るね」
女の子はそう言って立ち上がった。財布を片手にテキ屋の方へと歩いて行く。
「なんか、ええ感じやなぁ」
女の子の後ろ姿を包み込むように夏空が広がっていた。
空は鮮やかなほどに青い。

おれはシートに寝転び、仰向けになった。眼前に青空が広がっている。キレギレの雲、そよ風、時折見える飛行機・・・・。
おれの表情は和らいだ。すーっと、そんな表現が似合うだろう、静かな気持ちになった。
「どうしたん、にやけて」
「おっ」
女の子がたこ焼きをぶら下げて、おれの顔を覗き込んだ。
「にやけてた?」
「うん。
  空青いね」
「うん。青い、しデカイ」
女の子はおれの隣に寝転び、仰向けになって夏空を見つめた。
少しの間、女の子は空を見つめたまま何も言わなかった。
おれも何もしゃべらなかった。
その時、おれは幸せを感じた。

これはおれの理想郷である。
いつの日か、こんな時間が過ごせたらうれしいなぁ、と自分勝手に思っている。

「にやけてた?」
「うん。
 空青いね」
「うん。青い、しデカイ」

現実では、
「にやけてた?」
「うん、アホみたいな顔して」
「あっそ」
であるのだが・・・・。


マル 2004.8.4

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