ピー! ピー!!
ピー! ピー!!
「電車は間もなく発車いたします」
どんな奴がアナウンスしているのか想像もできない程の車掌の低い声がホームに響き渡る。
その中に相反するような若く弾む声。
「ちょ、ちょっと待って、待ってー!」
深刻な表情で階段を足早に駆け下りる加藤が叫ぶ。
加藤のすぐ後ろにいた萩原は後ろを振り向きながら大声で叫んだ。
「おい! おまえら、早くしろよ! 電車、間に合わねえぞ!!」
ここは片田舎にある人気の少ない街、情円市霞町。都会に際立つ車のクラクションや人ごみなどとは無縁の、静かな、静かな、太陽と土と水が目立つ街だ。
駅のホームからは隣県との県境である山々が360度に渡りはっきりと見ることができる。
それはまるで、手を伸ばせばすぐにでも届きそうなくらいに、近い。
2000年4月。春、真っ只中だった。
桜の咲いている山々はどんな有名なアーティストにも表現できないほど鮮やかで美しい。それは現在高校3年生で、これまでの2年間、何度も何度も遅刻と悪さを繰り返してきたこの不良たち5人にも美しいと感じれるほどだった。
電車がレールの上を走るゴトンゴトンという音が、少しずつ少しずつ遠のいていく。
1時間目に間に合わせる為には最終電車だったその消えゆく4両編成の電車を見ながら、永川は言った。
「菊池・・・・、まーたお前のせいだよ」
永川が後ろを振り向くと、ベンチにのけぞるように座りながら山を見つめ、クールにたばこを吸っている1人の男がいる。
田舎町ではあるがこの霞町の老若男女、知らない者は誰もいない菊池だ。
永川は「はぁ・・・・、何だ、こいつは」と言いたげな、しかし、「いつも通りだな」となかばあきらめかけの表情で、両手をズボンに突っ込みながら、かかとをふんずけた足でノソノソと菊池のいるベンチへと向かっていく。
2人の側で立っていた良はそんな菊池と永川を見て、クスっと笑っている。端整な顔をしているからだろうか、キザでなくてもキザに見える。
反面、時刻表と時計を何度も確認していた加藤は「また、怒られるよ・・・・」と、何か大失敗をしたかのように1人落ち込んでいる。
この物語は嫌々とも感じられる学生服の着こなし方をした、彼ら5人のリアルな物語である。 |