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scene 未成年
第12話「真相」 |
「おい! 島田!! いるんだろ、開けろよ!!」
いつも以上に大声で言ったが、返事はなかった。
「おい! 島!」
菊池がもう一度呼ぼうとした時、ドアのノブがゆっくりと回る。
島田が顔をのぞかせ、「さっきはどうかしてた・・・・。ま、入れ・・・・」と、うつむきながら顔を見せないで、小さくつぶやくように言った。
無言で入る菊池。島田の顔に涙の跡が見えた。
「このおっさんが泣くなんて・・・・。よほどのことがあったのか・・・・」
そう思って、数分間は何もしゃべれなかった。
教官室の窓から見える空は雨が降ってきそうな色合いをしている。
今、雨が降ればもう今年は桜を見ることはできない。
命には限定がある。期間は違えど、人も含め全ての存在の命には限定がある。
でもだからこそ、目を奪われる程に美しいのだろう。
「あのさ・・・・」
菊池が張りつめた空気を裂く。
「おれ、見ちゃったんだよ。お前とけいこがキスしてるとこ・・・・」
唐突に言った。
うつろな目をしていた島田だったが、その言葉を聞いたとたん瞳孔はカッと見開いた。
しかし、またすぐにうつろな目に戻る。
「・・・・。そうか、あの夜だな・・・・」
「そう・・・・。おれ、あの日学校の外周を兄貴のバイク転がしてたんだ。で、何でこの時間に明かりが付いてるんだ? って思って・・・・。
びっくりしたよ・・・・。でも、2人を見ていたらすごく愛し合ってるんだろうなって思った。教師と生徒、大人と子供なんかいう枠を飛び越えて、ほんとに愛し合ってるんだなぁって・・・・。
だから・・・・」
島田はピクリとも動かなかった。
しばらくして、島田の乾ききった唇が動き始める。
「お前には・・・・言うよ。大人である、子供を教える立場の先生がこんなの情けないけど、信頼できるのはお前しかいない・・・・」
そう言って島田は話始めた。
去年の冬、12月24日、クリスマスイブの日だった。
けいこが島田にクリスマスプレゼント渡した。プレゼントは手作りのクッキー。
「高校生らしくかわいいなぁ。こんな生徒を受け持って、おれは教師として幸せ者だ」
島田はその時、そう思っただけだった。
しかし、中に添えられていたメッセージカードを見て、島田は何とも言えない気持ちになったという。
「好きです、先生。ほんとに・・・・。もう止められない・・・・。
だから・・・・言っちゃうね。外でデートしたいけど、それが無理なら教室で勉強教えてよ。絶対だからね!」
そう書かれてあった。
「積極的な、あいつらしいな・・・・」
少しはにかみながら菊地は言った。
しかし、島田は散りゆく桜に抱く喪失感に似た面持ちで続ける。
「あの時、何かが壊れるような、そんな感じがした。怖いというより、何かがおかしくなりそうだった・・・・。それまで生徒のことを一人の女の子としてなんか見れなかった。そんなこと考えたこともなかった。でも・・・・」
島田の口から言葉が止まる。
「好きですとけいこに言われて見る目が変わったのか・・・・」
菊池は島田の言葉に続けた。
「そう・・・・だ。その瞬間からけいこちゃんを一人の女として見えるようになった。おれは教師である前に一人の男だ、そんな考えも生まれ出した。けいこちゃんの誘いを断ることができなかった・・・・」
両手で膝を握りしめ、島田は震え、泣きながらそう言った。
菊池はそれに何も答えることはできなかった。 |
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