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fourth scene 青春の輝き
第2話「yesterday once more」


「お前だけじゃない。おれもだ。
そして、永川も、加藤も・・・・。
あの日、加藤との最後になってしまった神社の祭りの日、
『アメリカへ行こう』、そう萩原が勇気を出して言っただけだ。
あの時、加藤は行きたかったんだろうな、萩原の話に食いついていたもんな。
おれたちは、そんなことすら知ろうとしなかった。
あいつの気持ちをわかろうとしなかった」

菊地はずっと考えていたことを言った。

「あぁ・・・・。
加藤が教えてくれたんだな・・・・」
あの日の加藤の顔が、良の頭の中に浮かび上がって来ていた。
加藤だけが萩原の話に誰よりも興味を示していた。

「あの時の加藤の目・・・・、どこかで見た気がした。
そうだ、あの頃の目と同じだった・・・・。
高校の頃、何でも好きなようにできていたあの頃の加藤の目だった・・・・」

そう言う良の声はまるで独り言かのように、小声だった。

「情けねえ・・・・。仕事に追われ、毎日何かに追われ、勇気を出して言った萩原の気持ちに水を差し、挙げ句の果てには、加藤も助けられなかった・・・・」
菊地がつぶやいた。

「流されていた・・・・、青春の輝きを忘れて・・・・」
良が消えるような声で言った。

「青春の輝き・・・・」
菊地は良が言った言葉を繰り返して言った。

しばらく間があった。そして、菊地が言った。
「ただ生きてりゃいい・・・・。
本当はそれだけなのにな。
仕事はしなくちゃいけない、大人にならなくちゃいけない、
そんなことばかり考え、自分で自分を縛っていた。
あの頃、高校の頃、何が一番嫌いだったかって、そんな腐った大人たちだったのに・・・・」

「頭ではわかっていた。でも、結局、心はそう思い切れなかった。
加藤が死んで、あって欲しくない最悪の形だったけど、あいつが教えてくれたよ」
良はグスッと鼻をすすり、言った。

「あぁ」
菊地はそう言うと黙った。

夜だろうと思った。
部屋のカーテンはまだ閉まりっぱなしだったが、良はなんとなくそう感じた。

「まだ萩原に行ってないけど、おれはあの話にのろうと思ってる」
菊地がしばらくして言った。

「アメリカ、か」

少し間があった。菊地が言った。
「あぁ、あの時、おれは友達に紹介してもらった仕事だから辞めにくいとか、
今いる彼女ともう付き合って6年で結婚を考えているとか、
そんなことでYESと言えなかったけどな」

「えっ、お前、結婚するのか?」
良は突然の菊地のセリフに驚きを隠せなかった。

「あぁ、そんなことも考えてる。
言ってしまえば、こんなこと簡単に言えるのに、何で今まで言えなかったんだ」

全ては青春時代に起因するのだろう。
恋愛よりも友情だった。
けど、それは『硬派であれ』なんて思っていたからじゃない。
素直に、女の子と一緒にいるより、男同士で遊んでいることの方が楽しかったし、心が震えた。
そこにはSEX以上に気持ちいいものがあった。
そしてまた、うれしい気持ちを現すのに、照れがあった。
素直に褒めるのではなく、けなすことでうれしい感情を伝えようとした。
そう、小学生が好きな女の子のスカートをめくるように・・・・。
そう、友達になりたいのに、そっけない相手をいじめるように・・・・。

でも、そんな成長しない自分たちも、今日で終わりだ。
加藤の死が4人を変えた。

話してる途中、度々間があった。
さっきから菊地も良も、お互いに自分の中でいろんなことを思いはせながら電話でしゃべっているのだろう。

「6年かぁ・・・・。菊地らしいな」
愛する人を大切にするという菊地らしさを、良は感じた。
「でも、アメリカ行くなら彼女はどうすんの?」
良が言った。
「話した。
泣いてたけど、動かせないのは気付いてたみたいだった。
でも、籍は入れようと思ってる。
最悪な新婚だけど、言った時、あいつはある種うれしそうだったよ。
『やっと、私が好きな菊地になったって』」
苦笑いをしている菊地の声だった。

「よく決めたな」
良もうれしそうに言った。

「本当は行きたかったんだ、あの時、萩原が言った時。
あいつが考えてることがわかって、あいつの優しさを知って、おれはYESと言いたかった。
ずっと自分は友達のそばにいたいと考えてたから。
でも、あの時は選べなかった。
友達のそばにいたいと同時に、女のそばにもいてやりたかった」

菊地はこれまで言えなかったことを言っていたが、何も恥ずかしくなんかなかった。
自分の全てを隠さず伝えることが、何よりも大切なことだと加藤が教えてくれたから。

「おれも萩原にそう伝えようと考えてた。
あいつに迷惑になるけど、すぐに行くなら金かしてもらって、向こうで返してでも、行こうって。
萩原の話を聞いた時は、不安でしかなかった。
いきなり異国の地へ行って、将来どうなるんだって・・・・。
でも、それくらいしなきゃ今の状況が変わらないこともうすうす感じてた。
動かしてくれたのは、加藤だ。
加藤が死んでしまった今じゃ遅いかもしれないけど、今は4人でいることを考えてるから」
良は言った。

「加藤のためにも行かなきゃいけない。
イエスタディ・ワンス・モア・・・・。
叶わぬ願いだとわかっていても、心の底からそれを求めた加藤。
おれはみんなで一緒にいたい」
菊地の声は熱かった。
「あぁ」
そう答えた良の声は透き通っていた。


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