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scene くすぶる日々
第5話「照れくさいな」 |
加藤と永川がSHOCK FOODに来たのは、萩原が良と会った一時間後だった。相変わらず、待ち合わせ時間に遅れる奴らだ。夕方の5時に待ち合わせれば6時に来る。夜の11時に待ち合わせれば12時に来る。いつも待ち合わせの一時間後に来るところなんかはあの頃と何も変わっちゃいない。
駐車場に現れた2人を見て、萩原は良に言った。
「まったく変ってないな。平気な顔して遅れてきやがる」
良はクスッと笑った。
永川も加藤も見かけはたいして変っていなかった。永川はジーパンに、「I hate you!」とプリントされたロックを感じさせるTシャツを着ている。変った部分と言えば、髪型だった。旅人のように、ホームレスのように、黒くて太い髪を無造作に伸ばしている。
横にいる加藤は細めのチノパンにシンプルなTシャツ、白のスニーカーと、まさにおとなしいといった感じのファッションだった。
こうやって遠くから、どこか落ち着かない挙動不審な加藤を2年ぶりに見ると、間違いなくかつあげのカモにされそうなタイプにしか見えない。
良がまだ車に気付かない2人に、ヘッドライトでパッシングをした。
永川は萩原と良の乗っている車に気付いたようだ。
少し笑顔を浮かべ、すぐ横を向いた。ひさしぶりの出会いはやっぱり少し照れくさいのかもしれない。
「ひさしぶりだな、萩原。元気にしてたのか?
良も、元気にやってたか?」
永川は車の後ろのドアに手をかけながらそう言って、乗り込んだ。
バタン! とドアを閉めると同時に萩原が言った。
「永川」
「うん?」
「何だよ、その髪の毛は」
萩原がうざそうに言った。
「あー、これか。ミュージシャンだからな」
永川は笑いながらそう言い、ジーパンから煙草を取り出し火を付ける。
「ほざけ」
「言うねぇ。それがひさしぶりに会った奴にいきなり言う言葉かよ」
ひさしぶり過ぎてぎこちなくなるかもしれない。萩原にはそんな不安があった。
加藤は何もしゃべらない。彼もまた変っていなかった。誰かがしゃべりかけないと加藤はいつもしゃべり出さない。
「加藤、何か食って来た?」
わかってる、そう言うように、萩原が言う前に良が加藤に話かけた。
「え、まだだよ。腹減ったし、早く中入ろうよ」
シートに座りながらまるで何かに焦っているように落ち着きのない仕草でズボンから煙草を取り出し、一本抜いて加藤は言った。
「じゃあ、何か食おうか」
良はそう言って、車のエンジンを止めた。
ガチャ、車のドアを開け、萩原が外に出ようとした時だった。
「菊地は?」
後ろのシートから聞こえたのは、加藤の声だった。
「メールの返事返ってきてない。あいつ、忙しいんだろう。
まぁ、時間出来たら電話かかってくるんじゃないの」
萩原が言った。
「そっか。あいつも忙しいねぇ」
永川が言った。
「そうだな」
うつむき加減で少し寂しそうに良は言った。そして、外に出て車のドアを閉めた。
今日の天気がよかったせいか、明日の天気がいいのか、黄金色をした三日月がクッキリと真っ黒な空に栄えていた。
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