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scene くすぶる日々
第6話「バカなところは変らない」 |
「ご注文、いかが致しますか?」
店内に入り席についた4人に水の入ったグラスを持って来た後、背の低いぶさいくな女の店員が伝票を片手に何の愛想もなく棒読みで言った。
これほどファミリーレストラン定番のフリフリの制服が似合わない奴も珍しい。彼女のあだ名を決めるなら10人が10人とも『ぶさいく』というあだ名をつけるだろう。
良は即座に決めていたまぐろ丼をオーダーし、永川はハンバーグ定食、加藤は海老フライ定食を頼んだ。
「じゃあ、おれはねぇ、とんこつラーメンとビール」
萩原が言った。
ぶさいくはキョトンとしている。
「すいません、うちにアルコール類は置いていないんですけど・・・・。それと、ラーメンはありません」
ぶさいくは首をもたげ、「おい、メニューちゃんと見ろよ、バカ」とでも言うようなしかめっ面で萩原を見た。
萩原はメニューを見た。「じゃあ、えぇっと、何にしようかなぁ」なんて一人ごちながら、メニューを繰っていく。
「んとね・・・・。
じゃあ、お前の電話番号は?」
萩原はぶさいくを見つめながら言った。
煙草を吹かしていた3人は一斉に萩原を見る。
ぶさいくは「何言ってんの??」とでも言うように目を見ひらげ、少し経って顔を紅潮させた。
おそらくこの顔ならナンパされるのなんて生まれて初めてだろう。
「はぁ? こ、困ります」
萩原は試すかのように、まだ半笑いの顔でぶさいくを見つめている。
見かねた永川が言った。
「あ、すいません。こいつバカなんで。
ハンバーグ定食でいいです。そう、だからおれのと合わせてハンバーグ2つね」
萩原はそう言う永川に手のひらを向け、
「いや、おれはハンバーグ定食じゃない。お前がいい」
ぶさいくに言った。
ぶさいくは一瞬萩原の顔を見、すぐに永川の方へと向いた。
「ハ、ハンバーグ定食ですね。わかりました。
ご注文繰り返します。ハンバーグ定食2つとまぐろ丼、そして海老フライ定食ですね」
さっきまでの無愛想さはどこへいったのか。完全にあがってしまって、助けてくれた永川をまるで自分の上司だと言わんばかりのていねいな口調で注文を繰り返した。
「おい、だからおれはお前の電話・・・・」
「すいません。じゃあそれで」
永川は萩原の言葉を遮り、言った。
ぶさいくは一礼をして、キッチンへと戻って行った。途中、萩原を振り返ったのはみんな見た。
「お前、こんな所で悪い冗談やめろよ、マジで」
永川が言った。
「喜んでたんじゃない、あいつ」
「アホか、お前は。喜んだっていらねえだろ」
「まあそうだけど」
「しかも、喜んでねえって。誰でも大勢の前であんなナンパされたら顔赤くなるだろうが」
「しかし、あいつ、最初のデカイ態度は一変、ガチガチになってたな。
シュールな笑いだ」
萩原はそう言って、目の前のグラスを一気に飲み干した。
「あいかわらず変ってねえなー」
3人は同時にそう言い、笑った。
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