加藤は高校を卒業して、合格が決まっていた私立大学へ入学した。
加藤の心の中には、この時多くの大学新入生が持つ期待は一切なく、不安しかなかった。
自分は菊地たちと出会うまで、友達と言える友達を持ったことがなかった。
小学生の時、中学生の時、いつもいじめられていた、一人ぼっちだった。
高校へ入学する際も、「どうせまたいじめられるんだろう」という思いだけがあった。
だけど、高校ではいじめられるどころか、生涯で初めて友達と呼べる仲間に出会った。
その仲間たち、菊地、萩原、良、永川は、自分と似ていた。彼らはこれまでの日々、自分と同じようにいじめられはしていなかったが、各自小学校、中学校で嫌われ者だった。
それは、人間的に周囲とは違う異質な雰囲気を持っていたからだった。
小学生や中学生は必要以上と言えるほどに素直なところがある。
自分とは違う異質な雰囲気を持った者をどこか恐く感じ、まただからこそ、排除したい気持ちになるものだ。
加藤は高校時代、これまでの人生で初めてだった仲間たちとの素晴らしい時間に浸かっていた。
これまでとは正反対の晴れた温かい日々は、一言、最高だった。
でも、今の気持ちを考えれば、昔の「いじめられるんだろう」という思いの方が楽だったかもしれない。
いじめられるんだろうな、それは寂しい思いだったが、自分の中で準備と覚悟することができたから・・・・。
だが、今の加藤は高校時代、友達との楽しい時間を経験してしまった。それがゆえに、「いじめられるかもしれない」と思い、それに対してひどく不安な気持ちいっぱいでいる。
いじめられるんだろう、と、いじめられるかもしれない、の微妙な違い。
だが、加藤の中の不安は天と地ほどの差があった。
「菊地、萩原、良、永川・・・・」
加藤はじっと卒業アルバムを見ながら、大学の入学式の前日を過ごした。
大学へ入学した後、加藤のそんな否定的な思いは悲しくも的中した。
もちろん、大学はクラスなどというものはないから、いじめられるということはなかったが、一人ぼっちでいたことには変わりなかった。
加藤の入学前の否定的な思いがそんな寂しい状況を作り出していた。
自分からはいっさいしゃべりかけない、またしゃべりかけてきても人間不信な気持ちが拒絶する。
それでは友達なんてできるわけがない。
加藤はそんな自分に気付きながらも、ただ待っていた。自分を受け入れてくれる奴が現れることを。菊地のような、あの4人のような存在を・・・・。
でも、現実そううまくはいかなかった。加藤は一人学校へ行き、授業を受け、家へと帰っていく。
電車や学校内では、大学生だろう仲間同士が一緒に登下校したり、授業のノートを貸し借りし合ったりしているのを横目で見ながら・・・・。
下校時間、いじめられている者には目立つ、悲しい思いを増幅させる夕暮れの空の色。
あの楽しかった、温かかった高校時代が加藤の頭の中でフラッシュバックする。
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