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scene くすぶる日々
第13話「ディスコ」 |
「御待たせ致しました」
黒のスーツに、黒のシャツを合わせた一人のウエイターがシャンパンを片手に、ダウンサービスをしている。
黒い髪の毛は、ハードジェルでキッチリとオールバックに整えられていた。
肌は少し焼けている。
シャンパンを注ぐ手の長い薬指にシルバーの指輪がよく似合っていた。
店内の空間は闇。その闇空間の真ん中に位置する天井には煌煌と七色に輝くミラーボールが回っている。
フロアーには300人を越える人々のざわめきと轟音が渦巻いていた。
アップテンポな電子音がひっきりなしに流れている。
店内の四隅に置かれている高さ50cmのお立ち台兼スピーカーの上には、まるで水着のようなセクシーなファションを身にまとった若い女たちが10人、激しく腰を動かし、顔を歪ませていた。
彼女たちは完全に酔っている。胸は完全に出ているわけではないが、素面だったらはずかしいと感じるほどに胸元は乱れていた。
そんなお立ち台の周辺のフロアーでは、若い男女がいちゃつき合い、ある女は10分前に出会っているはずの見ず知らずの男とディープキスをしている。
DJの方を向いたまま踊る二人。女の後ろから抱きついて胸や下半身をまさぐっている男、その行為に感じているのか、ただの淫乱か、女は男の股間をジーンズの上から触っていた。
ここはディスコ。とびっきりの自由と性欲が渦巻くディスコだ。
ダンスホールには若い男女が溢れ返っている。
夏のディスコはヤバい。
男は鍛え上げた肉体を強調するかのように、こんがりと焼けた肌にタンクトップを着、女の子はミニスカートに、薄い素材の肌を曝け出したトップスを合わせている。
そんなダンスホールを囲むようにして、低いソファー型のボックス席が十席以上並んでいた。
「ねえ、電話番号教えてよ」
踊っていたサラリーマン風の男が、ボックス席で飲んでいた3人組の女に声をかけている。
「えぇー、じゃあさぁ、シャンパン頼んで。おいしいやつ。
とりあえずさぁ、一緒に飲もうよ」
そう言いながらも心の中ではペロッと舌を出しているのだろう。
3人の中でもひと際男慣れしていそうな、したたかな表情をした女が言った。
女からそう返事をもらった男はすぐさま手をあげると、先ほどのオールバックの黒服のウエイターがボックス席にやってきた。
「御待たせ致しました。ご注文はいかがいたしましょう?」
左膝を床につけ、ダウンサービスをしたウエイターがメニューを女の3人組に渡した。
ウエイターはわかっている。
手を挙げ、金を払うこの男に「どのシャンパンにするか」を尋ねるよりも、女たちに聞いた方が高いシャンパンをオーダーするということを。
「ねぇ、どれ頼んでいい?」
3人組の一人、先ほどのしたたかな女がサラリーマンに聞いた。
美脚を見せつけるかのような極端に短い赤のミニスカート、トップスはバスト90以上はあるだろう、豊かな胸がこぼれ落ちそうになっているチューブトップ、顔は薄くもなく濃くもなくといった感じで化粧映えがする、純情のようにも見えるがエロイ、そんな雰囲気をしている。
男ががっつきたくなる顔だった。
「何でもいいよ。好きなの頼んで」
酔って笑顔満開のサラリーマンは女の太ももの部分をちらっと見て、言った。
「じゃあ、ドンペリ」
女は躊躇なく、まるで初めから頼むものが決まっているかのような返答をした。
サラリーマンの顔は全く見ない。
女はウエイターの顔を見つめながら、オーダーした。
「ドンペリですね」
ウエイターがオーダーを繰り返して言うと、女は言った。
「うん、ドンペリ。
お願いね、良くん」
女はそのウエイターである良に笑顔でそう言った。
「すいません、ドンペリ一つオーダー入りました!」
良はボックス席を離れダンスホールを抜け、オーダースリップをカウンターのバーテンダーに渡しながら思った。
「何だ、あいつは・・・・」
良がそう思うのも無理はない。
今日、良は女の家から出勤してきたのだった。
昨日の営業で女と仲良くなり、店が終わってから良は女の家に行った。
女は簡単に股を開げた。
「乱れてるねぇ」
その乱れている女とやったのは良だが、苦笑いでそう思った。
良は高校を卒業してから、性欲ととびっきりの自由が渦巻く、ディスコで働いていた。
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