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「くすぶる日々」(全26話)
  第1話  「ガキではない5人になり」
  第2話  「大人ということに追われ」
  第3話  「再会」
  第4話  「わからない感情」
  第5話  「照れくさいな」
  第6話  「バカなところは変らない」
  第7話  「深夜のファミリーレストラン」
  第8話  「夢か友達か」
  第9話  「夕暮れに向かって走る電車の中で」
  第10話  「夢の裏側」
  第11話  「ひとりぼっち」
  第12話  「背中にはいつも悲しい夕暮れがあった」
  第13話  「ディスコ」
  第14話  「で、どうするんだ、これから・・・・」
  第15話  「ホステスの女との生活」
  第16話  「ヒーローは遅れてやってくるもの」
  第17話  「あの頃の菊地」
  第18話  「自分が生きる理由」
  第19話  「やりたい仕事が見つからない」
  第20話  「旅」
  第21話  「2年前、前回の5人」
  第22話  「萩原が外国で見つけたもの」
  第23話  「言えない菊地」
  第24話  「情けねぇ」
  第25話  「23歳までの5人の生活」
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second scene くすぶる日々
第13話「ディスコ」


「御待たせ致しました」
 黒のスーツに、黒のシャツを合わせた一人のウエイターがシャンパンを片手に、ダウンサービスをしている。
 黒い髪の毛は、ハードジェルでキッチリとオールバックに整えられていた。
 肌は少し焼けている。
 シャンパンを注ぐ手の長い薬指にシルバーの指輪がよく似合っていた。

 店内の空間は闇。その闇空間の真ん中に位置する天井には煌煌と七色に輝くミラーボールが回っている。
 フロアーには300人を越える人々のざわめきと轟音が渦巻いていた。
 アップテンポな電子音がひっきりなしに流れている。

 店内の四隅に置かれている高さ50cmのお立ち台兼スピーカーの上には、まるで水着のようなセクシーなファションを身にまとった若い女たちが10人、激しく腰を動かし、顔を歪ませていた。
 彼女たちは完全に酔っている。胸は完全に出ているわけではないが、素面だったらはずかしいと感じるほどに胸元は乱れていた。

 そんなお立ち台の周辺のフロアーでは、若い男女がいちゃつき合い、ある女は10分前に出会っているはずの見ず知らずの男とディープキスをしている。
 DJの方を向いたまま踊る二人。女の後ろから抱きついて胸や下半身をまさぐっている男、その行為に感じているのか、ただの淫乱か、女は男の股間をジーンズの上から触っていた。

 ここはディスコ。とびっきりの自由と性欲が渦巻くディスコだ。

 ダンスホールには若い男女が溢れ返っている。
 夏のディスコはヤバい。
 男は鍛え上げた肉体を強調するかのように、こんがりと焼けた肌にタンクトップを着、女の子はミニスカートに、薄い素材の肌を曝け出したトップスを合わせている。
 そんなダンスホールを囲むようにして、低いソファー型のボックス席が十席以上並んでいた。

「ねえ、電話番号教えてよ」
 踊っていたサラリーマン風の男が、ボックス席で飲んでいた3人組の女に声をかけている。
「えぇー、じゃあさぁ、シャンパン頼んで。おいしいやつ。
 とりあえずさぁ、一緒に飲もうよ」
 そう言いながらも心の中ではペロッと舌を出しているのだろう。
 3人の中でもひと際男慣れしていそうな、したたかな表情をした女が言った。

 女からそう返事をもらった男はすぐさま手をあげると、先ほどのオールバックの黒服のウエイターがボックス席にやってきた。
「御待たせ致しました。ご注文はいかがいたしましょう?」
 左膝を床につけ、ダウンサービスをしたウエイターがメニューを女の3人組に渡した。

 ウエイターはわかっている。
 手を挙げ、金を払うこの男に「どのシャンパンにするか」を尋ねるよりも、女たちに聞いた方が高いシャンパンをオーダーするということを。

「ねぇ、どれ頼んでいい?」
 3人組の一人、先ほどのしたたかな女がサラリーマンに聞いた。
 美脚を見せつけるかのような極端に短い赤のミニスカート、トップスはバスト90以上はあるだろう、豊かな胸がこぼれ落ちそうになっているチューブトップ、顔は薄くもなく濃くもなくといった感じで化粧映えがする、純情のようにも見えるがエロイ、そんな雰囲気をしている。
 男ががっつきたくなる顔だった。
「何でもいいよ。好きなの頼んで」
 酔って笑顔満開のサラリーマンは女の太ももの部分をちらっと見て、言った。

「じゃあ、ドンペリ」
 女は躊躇なく、まるで初めから頼むものが決まっているかのような返答をした。
 サラリーマンの顔は全く見ない。
 女はウエイターの顔を見つめながら、オーダーした。
「ドンペリですね」
 ウエイターがオーダーを繰り返して言うと、女は言った。
「うん、ドンペリ。
 お願いね、良くん」
 女はそのウエイターである良に笑顔でそう言った。

「すいません、ドンペリ一つオーダー入りました!」
 良はボックス席を離れダンスホールを抜け、オーダースリップをカウンターのバーテンダーに渡しながら思った。
「何だ、あいつは・・・・」

 良がそう思うのも無理はない。
 今日、良は女の家から出勤してきたのだった。
 昨日の営業で女と仲良くなり、店が終わってから良は女の家に行った。
 女は簡単に股を開げた。

「乱れてるねぇ」
 その乱れている女とやったのは良だが、苦笑いでそう思った。

 良は高校を卒業してから、性欲ととびっきりの自由が渦巻く、ディスコで働いていた。


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