良は、高校卒業後、浪人して大学へ行こうかどうしようかと決めあぐねていた。
同級生たちはみんな何にしろ進路が決まっていた。
加藤のように大学に行く奴もいれば、菊地や永川のように専門学校に行く奴もいて、また、フリーターになって夢を追いかける奴もいれば、就職する奴もいた。
自分だけは何も決まっていなかった。
何もないから大学へ・・・・。
良は多くの大学生たちが思うのと同じように考えていた。
でも、乗らない気分は決断をさせてはくれなかった。
ただ単に日々はどんどん過ぎて行った。
何も決まらない中で、ただ遊ぶ金が欲しかった良は、とりあえずバイトをしようとアルバイト雑誌を買い、探すことにした。
そこにあったのが、ディスコの求人。
男前で、しかもしゃべりも適当にこなせる良だけに、学歴や経歴よりもまず顔で選ばれるというディスコの面接に、未経験ながら簡単に合格した。
高校を卒業して、毎日のように繁華街へ遊びに行くようになった良は、夜の世界に興味を示していた。しゃれたバーで酒を飲むことに大人のかっこ良さを感じ、女と遊ぶことが楽しかった。
卒業ライブを最後にして、いつの間にか自然消滅のようにして消えて行ったバンド。
けど、良にとって終わっていくバンドにそこまでの未練はなかった。ハッキリ未練はないとまでは言えないが、この先何がなんでももう一度やりたいとまでは思わなかった。
漠然と新しいやりたいことを模索する日々が続いていた。そんな生活の中で目先の楽しさに食いついていた。
菊地が音楽の専門学校を辞めると聞いた時は、さすがに「菊地はこれからどうするんだろう?」と考え、菊地と共に、新しいバンドを見つけた永川を抜いて、ドラムのモヒカンと3人で新しいベーシストを探そうとしたが、そんな活動もすぐに終わった。
良が最初にベーシスト探しからスッと抜けていった・・・・。
ボーカルの募集はいっぱいあった。ましてや、独特の個性がある菊地。
彼を欲しがるバンドは多かった。だが、菊地は絶対に一人抜け駆けのような形をしようとはしなかった。
それを良は、自分たちが菊地の足を引っ張っていると感じていた。
それに加えて、何がなんでもやりたいと思えない自分の中にあるバンドに対しての冷めた気持ちに気付いていた。
良にとってバンドは遊び感覚だったのかもしれない。
バンドは、音楽は好きだったが、良にとってみれば自分がやるのではなく、ただ憧れるだけの存在だった。
自分の中から「どうしても」と強く思い、全てを捨てて向かう程の対象ではなかった。
やりたいことがなにもない。というか、全てのことにどこか熱くなく、冷めた気持ちでしかない。
そんな日々の中、自由と欲望が渦巻いているディスコの世界は楽しかった。
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