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「くすぶる日々」(全26話)
  第1話  「ガキではない5人になり」
  第2話  「大人ということに追われ」
  第3話  「再会」
  第4話  「わからない感情」
  第5話  「照れくさいな」
  第6話  「バカなところは変らない」
  第7話  「深夜のファミリーレストラン」
  第8話  「夢か友達か」
  第9話  「夕暮れに向かって走る電車の中で」
  第10話  「夢の裏側」
  第11話  「ひとりぼっち」
  第12話  「背中にはいつも悲しい夕暮れがあった」
  第13話  「ディスコ」
  第14話  「で、どうするんだ、これから・・・・」
  第15話  「ホステスの女との生活」
  第16話  「ヒーローは遅れてやってくるもの」
  第17話  「あの頃の菊地」
  第18話  「自分が生きる理由」
  第19話  「やりたい仕事が見つからない」
  第20話  「旅」
  第21話  「2年前、前回の5人」
  第22話  「萩原が外国で見つけたもの」
  第23話  「言えない菊地」
  第24話  「情けねぇ」
  第25話  「23歳までの5人の生活」
  第26話  「曇った心にはいつか雨が降る」

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second scene くすぶる日々
第22話「萩原が外国で見つけたもの」


 永川は以前よりも髪が伸びていた。
 しかし、萩原はそれ以上に変ったと思う部分を感じた。

 永川は堂々としていた。しかし、それがいい意味の、ではなかった。
 自信を持った者の雰囲気を無理にしている様が感じられた。

 歳は時に人を小さくさせる。
 その要因は、経験なのかもしれない。もしくは、現実の理解なのかもしれない。
 萩原は永川を見ていて、現実の今の彼の生活がうまくいっていないのが身にしみる様に感じられた。

 萩原は「お前はどうだったの、旅?」と言った永川に返事をした。

「おう、よかったよ。また行くと思う。
  本当なら今すぐにでも行きたいんだけど、何せ金がないからね。ガツンとバイトやって、金貯めてから行こうかなって」

「外国かぁ・・・・。外国でさ、何やってたの?」
 永川が答える前に、加藤が噛み締めるように言った。

「何って、特に何もやってねえなぁ・・・・。
 朝起きて適当にビーチとか歩いて、毎日違うレストランでメシ食って、行きたい所へ行く。人としゃべりたくなったら言葉通じないのわかってながらも適当にジェスチャーだけでしゃべったり。
 向こうで出会った日本人とかも楽しい奴多かったよ。すごい感性っていうか、しゃべることがすごくデカイっていうか。
 何って言えば、何もしてない。だけど、何もしてないけど、こっちにいる時とは全然違うことをしていたと思う。こっちじゃ、毎朝知らないレストランでメシ食うこともないし、毎日新しい人と出会うこともないし、毎日知らない風景に囲まれることもないから。時にはあっても毎日じゃない、そこが違うと思う。
 生活がほんとシンプルだった。一言で言えばそこが違うのかな」
 萩原は時に笑顔を浮かばせながらみんなにしゃべった。

「なんかよくわかんねえけど、お前の話を聞いてたらおれも行きたいって思うよ」
 菊地が言った。優しい表情だった。

「寂しかったり、おれ何やってんだろ?って思うことも多々あったけど、それでも何か自分の大切なものを見つけた気はしたね」

「それって何?」
 加藤が言った。覗き込むように、そして普段見せない熱いまなざしだった。
 萩原はそんな加藤の目に驚きながらも、言った。

「毎日をちゃんと生きるってことだ、とおれは思った。流れないって言うか、流されないって言うか・・・・。
 例れば、明日もかぁ、とは思わないように毎日を生きる。
 歩いてても、ただメシ食ってても、違ってくる。どこか、おれ、生きてるって自分の中で感じてる」

「ちゃんと生きる・・・・、難しいな」
 良が真剣な顔で言った。シートに深く横たわりながら窓の外を見つめて煙草の煙をふかした。

「おれの言ってること、が?」

 萩原は自分が何を言ってるのかわかっていた。
  おそらく、旅に出た者にしか理解できない思いなのかもしれない、と。
 でも、みんなにはわかって欲しかった。

「うん、ちゃんと生きるってどういう風に生きてることなのかがわからない」
 良が言った。
 萩原は良の言葉を受け、ゆっくりと、そして真剣な表情で言った。

「おれがビーチで一人たたずみながら思っていたのは、明日死ぬかもしれないってことだった。
 毎日のように人と出会ってたけど、同時に同じ数だけ毎日のように別れがあった。
  そんな日々を繰り返している中で、こいつとの時間はもう一生ないかもしれないって感じたことが何回もあったんだよね。外国の奴だし。
 そう思った時に、時間を大切にしようって心の底から思った。そう思った時、何か身体がブルブル震えたよ。
 今の時間はもうない。なら、今この一瞬を心の底から大切にして生きていかないとって。
  そして、そのデカさは明日死んだらって自分が思う程に思わなきゃいけないことだって」

 萩原は遠くを見つめるようにして、言った。
 良は萩原の顔を見つめていた。良だけじゃなく、永川も加藤も見つめていた。


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