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third scene 友達の死
第8話「祭りの後

「アメリカへ行こう、みんなで」

 祭りの帰りがけ、神社を出て、みんなで「いったい次はいつ会うんだ?」なんてしゃべっていた時だった。
 一人立ち止まって、真剣な表情で萩原はそう言った。

 4人は脚を止めて、萩原の顔を見つめた。
 横を通り過ぎるカップルや家族連れが、真剣な表情で一人の男を見つめているその状況に怪訝な表情を浮かべ見返っていた。
 周囲のざわめきとは反する5人の沈黙・・・。
 砂利道を通りいく足音、ジャッジャッ、という音だけが萩原の耳に入っていた。

 静かで冷たい風が吹いていた。
 日付は変わって、深夜の2時だった。

 萩原は高校を出てから、みんなそれぞれ仕事や夢、自分たちの背負うものに追われ時間がなくなり、会えなくなっているのを身にしみていた。
「じゃあ、みんなで仕事を一緒にすればいい」
 単純か、ハッキリしているのか、萩原はそう考えた。

 高校の頃はみんなで学校に通った。なら同じように、みんなで一緒に仕事をすれば、毎日のように時間を共有することができる、と考えた。
 普通ならいくら寂しくても、
「大人になったんだから、いつまでも友達友達って言ってても仕方がない」
と考えるが、萩原はこの歳になっても違った。

 そして、そう思った日以来、萩原はそのことばかりを考えた。
 でも、「何の仕事をするか?」ということが見つからなかった。だから、旅に行き、いろんなバイトをやり、と、とにかく今の自分の好きなこと、やりたいことをやりまくった。
 そうしている過程で、いつか見つかるだろうと萩原は考えたのだった。
 だが、結局のところ、今もそのことについては見つかっていない。

 みんなで一緒にできることを見つけようと必死だった萩原、その姿は一匹狼だった。

「こいつらのそばにいたい」と、菊地とは同じようなことを考えつつも、ひたすらに自分のやりたいことに夢中になっていて、時に電話で話しても自分のことしかしゃべらない萩原の姿は、菊地に感じるものとは正反対に、「自分のやりたいことに夢中で、友達を顧みない奴」と、悲しくも他の奴らには映っていた。

 現に、萩原だけではないが、加藤は萩原のそんな一匹狼的な姿からも遠さを感じていた。

「どうしたんだよ、急に?」
 良が言った。
「おれ、今回は冗談で言ってるんじゃない。本気なんだ・・・・」
 そう言って、萩原は話し出した。

 みんなで何か一緒にしたいと、高校を卒業してからずっと考えていた。少し前まではずっと何かで会社をやろうと思っていた。みんなでやれば、あの卒業ライブの時のように、刺激的であたたかい、情熱的な時間が過ごせるだろうと考えていた。

「ちょっと待て。お前そんなこと考えてたのか?」
 菊地が驚いたように言った。
「あぁ。高校卒業してからずっとな・・・・。
今日までずっと言えなかった、言いにくかった・・・・。だって、何言ってんだ?って感じじゃねえか・・・・。
 とにかく、みんなでアメリカ行って、向こうで必死に暮らしながら、「その何か」を探さないか?」
 萩原はずっと熱いまなざしと口調だった。

「何で、アメリカなの?」
 永川が言った。
「それは、おれが外国へ行って、日本と違う雰囲気、価値観を感じて来たからだと思う。みんなにも合う、とおれは思った。向こうにいる時、よくそんなことを考えたんだ」
 萩原はそう言い終えて、ジーンズの後ろポケットから財布を取り出し、側にあった自動販売機に金を入れ、缶コーヒーを買った。

「おもしろそうだね」
 ふと加藤が言った。その表情はさっきまでよりも元気に見えた。
「だろ、加藤?」
 萩原はうれしそうだった。
「うん。
 でも、金はどうすんの?」
 加藤がそんなデカイ話に誰よりもしゃべっていることがみんなには驚きだった。
 みんなの視線は萩原でなく、加藤に集まっている。
「金はある程度ある。おれが次の旅の為に貯めている金が80万円あるから、最初はそれをみんなで使ってさ。
 まぁ、向こうに着いたらすぐにでも仕事探さなきゃならないだろうけど」
 萩原は缶コーヒーを飲みながら言った。

 加藤は萩原以外のみんなの顔を見た。
 その視線に気付いた良が言った。
「でも、突然過ぎないか。おれ、バイト始めたばっかだし・・・・」
 良は先月から、隣県の繁華街の飲食店でアルバイトを始めていた。
 さっきもその話を少ししていて、そのバイトを「おもしろいよ」と素直に言っていた。
 その後、
「おれも無理かも」
 と、菊地がいつもより少し小さな声で言った。
「何で?」
 先ほどまでの熱意こもった萩原の声のトーンは落ちている。
「仕事辞めらんないから」
 申し訳なさそうに言った。
 その横で、永川も「無理だ、おれも」といった表情をしていたのを萩原は見てしまった。

 しばらく、どれくらいだろう、5秒、10秒・・・・。
 萩原はそれから何も言えなかった。その間、誰一人として何も言わなかった。
 近所に住む高校生だろうカップルが、そんな5人を少し避けるようにして通り過ぎて行った。

「仕方がないな。突然過ぎるよな・・・・。気にしないでくれ」
 あからさまに悲しさをこらえ、強がった表情で萩原は言った。

 その時、加藤は萩原の顔を何か訴えるようにして見た。
 何かを言おうとしていたそんな加藤を、みんなは見ていなかった。
 それぞれが「この話は、萩原は適当にノリだけで、ちゃけて言っているんじゃない」ということは感じ取っていて、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

 町中についていた提灯の明かりが消された。
 辺り一帯は一気に暗闇に包まれた。


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