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third
scene 友達の死
第10話「YESが言えなかった」
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菊地はみんなと別れた後、帰り道を車で走りながら考えた。
「何故、萩原はあんなことを言ったのだろうか?」
しかし、それはすぐにわかった。萩原も自分と同じ気持ちをみんなに対して持っているのだ、と。
高校を卒業してからいやに萩原に自分との近さを感じることがあった。もちろん、高校の時も近さを感じていたから一緒にいてたのだが、永川や良、加藤には感じ得なかった「近さ」を感じていた。
その時々で、それは何故なのかわからなかったが、この時、萩原が自分の考えていることを口に出したことで、菊地は心に染みてくるように萩原の気持ちが理解できた。
「優しいんだよ、あいつは・・・・」
そう思うと同時に、「YES」と言えなかった自分が情けなく、悔しかった。
菊地が「YES」と言えなかった背景には自分の背負っているものがあった。
今の仕事は友達に紹介してもらったドカタの仕事だから、そう簡単には辞められないということもあったが、もしそれだけなら菊地は「YES」と言っていただろう。萩原が「みんなでアメリカに行こう」と言った時、菊地はものすごくうれしかった、純粋に・・・・。
菊地は断る理由に、仕事を出したが、本当はそうじゃなかった。
高校を卒業して、専門学校を辞めた後にバイトで知り合った、一番つらい時期を支えてくれた彼女の存在があった。
付き合い始めて、もう6年。
菊地は25歳。最近では結婚の話も出て来ている。
責任感で結婚するわけじゃない。素直に好きな彼女を幸せにしたいという気持ちが菊地の中には大きくあった。ただ、言葉を変えれば、菊地にとって彼女は背負うべき存在になる。それは何も否定的な考え方ではない。人一人養っていくのに、自分が背負う覚悟がなければできっこなんてない。
萩原が求めていたのは、あの卒業ライブの時のような、友達が集える場所、確固たる「場所」作りだった。
誰の目にも明らかで、現実的に集える場所。
菊地はそんな萩原の気持ちを知った気がした。
菊地はうれしかった。
だけど、「YES」を言えなかった。
パァーン!パパーン!!
後ろからクラクションをならされ、そこで菊地はそうやくハッと我に返った。
頭の中は萩原への気持ちと、自分のどうしようもない気持ちでいっぱいだった。
加藤が積極的にあの話に賛成だったことにも胸に引っかかった。
だが、この時は萩原のことを考えることで精一杯で、加藤のことまで考えることはできなかった。
それからわずか2週間後だった。
加藤は実家の風呂場でリストカットして自殺した。
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