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third scene 友達の死
第12話「最後のメッセージ」

 立って電話でしゃべっていた菊地は、その場に崩れ落ちた。
 フローリングの床に菊地の膝の骨が勢い良く当たり、ゴツッという音が鳴り響く。
 普通なら骨が折れるほどの衝撃で、当たり前に痛いに違いない。
  だが、菊地は表情一つ変えなかった。
 身体にまったく力が入らなかった。
 菊地は頭から前のめりに崩れ落ち、額と鼻を床に打ち付け、そのまま「あぁー!!!!」と叫んだ。

 同時刻、萩原、永川、良の元へも、霞警察署から連絡があった。

 加藤の自殺から1週間後、加藤の葬式が行われた。
 加藤の母は事件から1週間経った今でも、身体の震えが引いていない。当たり前だろう、息子が死んだのだ。悲しさは別として、親友であった菊地たち以上の悲しみであったことは間違いない。
 加藤のお父さんは、息子の自殺以来ずっと仕事に行っていないという。
 菊地たちは式場で何もしゃべれなかった。あの高校卒業前の同級生だったけいこの赤ちゃんの葬式で、けいこと先生であり、彼氏であった島田に声を何もかけることができなかったのと同じように。
 ただもうこれは現実の出来事であることはわかっていた。

 警察から加藤が自殺したことを聞いた後、時間が経てば経つほど、その言葉はどんどんリアルさを増した。
 時間が癒してくれる。
 それは間違いのない事実だが、この時はその正反対だった。

 外では、秋の紅葉がそんな現実とは正反対に、とんでもなく美しかった。
 まだ心地よいほどの冷たい風が、様々な色に色づいた葉を何枚か散らしている。
 この時期、多くの人は紅葉を見に出かけているのだろう。
 家族連れで、恋人同士で、また、友達同士で・・・・。
 友達を失った菊地たちには、そのことの方が現実的じゃなかった。

 葬式が終わり、菊地たち4人は加藤の両親のところへあいさつに行った。あいさつと言っても何も言えず、ただただひたすらに頭を下げた。
「菊地くん? それに萩原くん、良くん、永川くん、ね?
 忙しい中、息子の為にどうもありがとう」
 加藤の母は、今にも倒れそうな覇気のなくなった表情をしていたが、少し笑顔を作り、言った。
 そして、加藤の母は息子の部屋に4人へのメッセージがあったことを知らせた。
「あの子の部屋の机の上にメモがあって。これがそうなんだけど・・・・」
 加藤の母はそう言って、喪服のポケットから一枚の葉書サイズのメモを取り出した。

 うつむきながら彼女はそのメモを菊地に渡した。
「菊地、萩原、良、永川、ごめん。
 おれ、大人になれない。
 一人で生きれない」
 そばにいた加藤の父は言った。
「警察には渡してないんです。あなた方宛のものだから、直接渡した方がいいだろうと思って」
 菊地は何も言えなかった。
 ただ、その短過ぎる、加藤からの最後のメッセージ、手紙を見つめていた。
 菊地の目から涙が出てくるのに、時間はいくらもかからなかった。
 出て来た涙をこらえ、菊地は下を向き、目をギュッと強く閉めながら、両親に言った。
「あ、ありがとうございます」
 菊地の両親は何も言わなかった。

 親友の愛は、両親のそれに似ている。
 加藤の両親たちはそんな息子の親友たちの涙をこれ以上見ることはできなかった。

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