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ファイル1
「ドイツ フランクフルト国際空港」
note by Maru
ファイル2
「カンボジア」
photo by U-YAMAUCHI
ファイル3
「ボスニア・ヘルツェゴビナ」
note by Ryo
ファイル4
「UN ION SQUARE in U.S.A」
note by Yuji Orito

旅行も自分流にカスタマイズ!「航空券」+「宿泊」=【ANA楽パック】
「ドイツ フランクフルト国際空港」

バックパックを背負った旅ではなく、ガラガラと旅行カバンを転がしてのツーリストとして、2003年3月、約一ヶ月の間、男4人でヨーロッパ旅行に来ていた。
ぼくはフリーフリーター。もの書きをやっていて、けどどこにも所属していないから自分で「フリーです」と言うのは簡単だけど、あんまりお金も稼いでいないってことで、フリーな職業をやっていて、けどフリーターみたいなもんだから自分ではそう言ってる。パリへの入国の際に「free freeter」と書いて、ちょっと首を傾げられただけで入国できたのには笑えたけどね。
他の3人、ノブキ、ネギ、サカイは学生で、3人ともこの春で卒業する。4月からは晴れて社会人だ。おめでとう。
しかし、そんな喜びの反面、寂しい思いもある。日本へ帰国してから入社する3人と会う機会はこれまでより極端に減るだろう。
学生から社会人へ。子供から大人へ・・・・。
誰もが皆経験することだ。
出発前、そして旅行の間、4人の間にはそんな少し寂しい雰囲気も漂っていた。

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ドイツのフランクフルト国際空港。
この旅行の最後の何日かは各自それぞれ自分たちの行きたい国や街へ行っていた。自由を愛する、そしてちょっと強気な冒険野郎たちであるこの4人ならずっと一緒にいるよりそうする方がいいだろうと思ったのだ。ノブキはイタリアから、ネギとサカイはロンドンから、そしてぼくはルクセンブルクという国からここ、フランクフルトへ向かっている。
日本へ帰る飛行機の出発がフランクフルトだっただけで、この街には一泊すらしていない。そんな街がまさか記憶に残る街になるなんてこの時は思いもしなかった。

搭乗手続きのチェックアウトを済ませ、ユーロから日本円への換金もし、日本に残す悪友たちへのお土産も買った。さあ、もうあとは飛行機出発までの1時間をつぶすだけだ。
4人が揃ったところで空港内のカフェに入り、せめては少しくらいドイツを堪能しようとビールとソーセージをオーダーすることにする。ネギが彼女に電話するということで席を立ち、残りのぼくたち3人は「どのソーセージをオーダーするか?」ということにケンカになるほど夢中になっていた。
やがてキュートなウエイトレスに運ばれたビールとソーセージがテーブルの上を飾る。4人の有り金を使い切ってオーダーしたビールとソーセージの量は驚く以上に多い。日本のカフェで出てくる食べ物と皿とは何から何まですべて大きさが違うのだ。
最後の最後にふさわしい、男臭いパーティーが始まる。
ネギが戻ってきたところで乾杯し、話は盛り上がった。最後だから一枚みんなで写真を撮ろうということになった。男4人で写真なんて照れくさいが撮っておきたい。今回の旅行で様々な街やヨーロッパの世界遺産を撮った。どれも素晴らしく、日本へ帰ってからのいい思い出になるだろう。けど、ぼくはわかっている。何年も経って、一番大切にしているのはこれから撮るこの4人の写真なんだ。

そんなことを思い、足元に置いたカバンの中からデジカメを取ろうとした。

「あれ!? えっ!? ウソだろ??」

ぼくのかばんがない。パスポート、飛行機のチケット、デジカメ、手帳、この旅行中に出会った人たちの連絡先、メモ・・・・。それらがすべて詰まっている、あるはずの大事なカバンがなかった。

盗難。日本人ツーリストが海外で一番よく会う犯罪だが、旅慣れしている自分には関係ないことだと思っていた。
「まさか、な・・・・」
最初は信じられなかった。だから、ぼくは3人の悪ふざけだろうと思って尋ねた。
ぼくを含めそんな4人だ。毎度のことだろうと思ったのだ。
「おいおい、おれのカバンどこに隠してん?」
しかし、ノブキは真顔で言う。
「はぁ!? そんなん知らんで。チェックカウンターで荷物預ける時に一緒に渡したんちゃうの?」
もうええって、という表情で、逆にぼくが悪ふざけしていると思っている。
ネギとサカイも同様だった。「もうええって。それよりこのソーセージうまいなぁ」と言い合っている。
「おい、マジかよ??」
そんな3人を見て思った。
「ヤバイ! 本当にカバンがなくなった!!」

時計を見ると飛行機の出発時間まであと一時間を切っている。
まだぼくの悪ふざけだと思っている3人に「おれが間に合わなかったら先に帰国しといてくれ!」と言い残し、席を立った。
「マジで言うてるん? ありえへんやん・・・・」と3人は口々に驚いた表情をしている。
「絶対に間に合わすから!」ぼくはそう叫び、空港内を走り回った。
帰国日と着時間を愛する彼女に伝えている。携帯は日本。「私のことは気にしないで楽しんできて」という彼女の申し出で携帯番号はメモしてこなかった。ならば、絶対にこの飛行機に乗らなければならない。旅する者からすれば何日遅れようが仕方がないことだが、待っている者からすれば心配で仕方がないことなのだ。しかも、日本着の3時間後に出版社との大事な打ち合わせも入っていた。
そして、最もぼくを焦らせたのは、帰国後会う機会も減るだろう3人と一緒に帰りたいという気持ちだった。

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空港内のインフォメーションに駆け寄る。ここはドイツ。つうじるのかつうじないのかわからないけど、英語でおばちゃんに説明する。身振り手振りのジェスチャーも織り交ぜるがまったくつうじていないようだ。
「おい! 国際空港だろ! 英語ぐらいわかれよ!」
焦っていたぼくは性格悪く、自分勝手にドイツにキレタ。
しかし、そんな中でもぼくの必死さがつたわったのか、ぼくの背中の方向を指差しながら、「ポリス、ポリス」と言っている。
ぼくは「thanks!」と言い、振り向いた向こう側にいる機関銃を肩からぶらさげた警察官2人の元へ走っていった。
警察官2人に必死に状況をつたえている間、空港内にアナウンスが鳴る。
ぼくたち4人が乗る予定の飛行機の搭乗時間だ。あと30分。いや、もう30分しかない。
「ヤバイ」ぼくはより焦った。

警察官2人と共に空港内の地下にある警察署へ向かう。日本で生まれた者が普通に生きてりゃ絶対に行くことなんてないだろうドイツの警察署だ。その中の「lost and found」という課へ連れて行かれる。ここへ来る途中からずっと警察官に叫んでいることなのだが、警察官たちはぼくに時間がないのをわかってくれない。今でもまた身分証明をゆっくり聞いてくる。これで何度目だ、自分の自己紹介をしているのは・・・・。
けど、まあ仕方がない。ぼくはここでは正体不明の異邦人だ。氏名、日本での住所、連絡先、パスポートナンバー、なくなったもの、そしてその場所、時間。一つ一つ事細かく詳細に尋ねられ、フォームに記入していく。
警察官もぼくもある程度は英語を話せる。けど、お互い何でも話せるわけじゃない。特に焦っているぼくが英語で今の状況を事細かく説明するのはむつかしいことだった。
だから、余計に時間がかかる。会話がかみ合わなく進んでいかない。最悪だった。
出発時間まであと15分を切っている。
「間に合わないな」そう思った。

警察署を出たぼくはさっきの警察官2人と共に今度は出国カウンターへ向かった。警察官と共に、パスポートはないがチェックアウトまで済ませているぼくを出国させてやってくれ、と頼むためだ。向かう最中は落ち着きを取り戻していた。「あいつら、おれのソーセージも食いやがったのかな?」とか「もうちょっとビール飲んでおけばよかったな」とか考えるまでに焦りは消え、余裕が出てきていた。なぜなら、警察署を出る前に警察官はぼくにこう言ったのだ。
「おそらく君は出国できるだろう。日本人だからね」と。
ニッポン万歳だ! 日本が平和を愛する国であることを誇りに思う。
出発時間まで残り10分。けど、もう時間なんてどうでもいい。ぼくはこれからすぐに出国できるんだから。
けれどもその期待はすぐに完璧に打ち砕かれることになる。
「ダメだよ」
「えっ!? 何で??」

理由を聞けば納得せざるを得なかった。その日は、いやその時間はアメリカがテロに対する報復でイラクに戦争を始めた、まさにその瞬間だった。
「いつもなら出国させてやることはできる。けど、今日に限っては絶対にダメだ」
空港全体にピリピリとした緊張感が張り詰めている。
だからといって、理解はできても、ぼくにはぼくの事情がある。どうすればいいんだろう・・・・。もう迷っている暇さえなかった。残り10分もないんだ。
出国カウンターの職員と警察官が話し合って航空会社のカウンターへ行くことになった。さっきからもう走りっぱなしだ。正直、疲れた・・・・。
ここまでみんながぼくの為だけに必死になってくれていることが見えなくなっていた。
「FUCK!!」
ぼくのイライラと精神的な疲れはピークに来ていた。アツクなり過ぎて空港内全体に響き渡るほどの大声でそう叫んでいた。
全員がこっちを見る。近くにいた中東系の5人組がぼくの方に向かってくる。もしかしたらイラク出身の人たちかもしれない。だとすれば彼らもぼくとは違う理由でピリピリしていたのかもしれない。
むなぐらを掴まれ、一触即発の状態になった。
その間に傍にいた警察官2人が入ってくる。そして、カウンターの前まで来ていた、ぼくが乗る予定のコリアンエアーの職員も割って入ってくる。
「sorry,mateノ.. sorry」
そこでやっとぼくは冷静になった。

空港にある大きな時計を見ると、あと5分。もう間に合わない。
最後の悪あがきだ。いや、意地だ。
ぼくはとりあえずコリアンエアーの職員に駆け寄った。
「どうしてもこの飛行機に乗りたいんだ」
友達、彼女、仕事のことを考える。無理だとわかっていても、カバンを足元においてビールを乾杯していた自分の自業自得だと理解していても、そうしたかった。

出国カウンターに駆け寄ってくれていたコリアンエアーの職員が戻ってくる。
結果はやはりNOだった。
出発まであと2分。悪あがきも意地もなくなった。もうさすがにあきらめた。
その時!
「takeshi ishimaru.your bag found.takeshi ishimaru,your bag is at departure counter,now. Your bag found」
空港全体に響き渡るアナウンスがぼくの耳に入ってくる。
タケシ イシマル? ユアー バック ファウンド?
「マジかよ! おれじゃねえか! カバン、見つかったのか!!」

ぼくは出国カウンターへ猛ダッシュで向かった。
出国カウンターの職員、警察官、インフォメーションの人、コリアンエアーの職員、みんなが集まっている。そして、あるおばちゃんがあれほど捜し求めていたカバンをぼくに渡してくれた。
「やったー!!」
ぼくは集まっているみんなに「THANKS,THANKS!!」と大声で叫び、カバンを見つけてくれたおばちゃんの頬にキスをした。
ちなみに、ぼくのカバンはゴミ箱に捨てられていたそうだ。運良く中身は一切手がつけられていなかった。

出国カウンターを通り抜け、搭乗ゲートに向かう。
なんと、3人は飛行機に乗らず待っていてくれていた。
ノブキ、ネギ、サカイの3人、コリアンエアーのスチュワーデスたち、パイロット、職員が拍手で迎えてくれる。
「ありえないよな、ぼくのせいでみんなに迷惑かけたのに拍手で迎えてくれるなんて・・・・」ぼくはカバンが見つかった喜びと、みんなと一緒に帰ることが出来るうれしさと、そんなぼくのうれしさに共感してくれるように拍手までしてくれているドイツ・フランクフルト国際空港で働いているみんなのあたたかさを感じ、涙が出た。
そんなぼくに、「あと10秒よ」と笑いながらスチュワーデスが言う。
「おっ! ヤバイね」
「THANKS,MATE!」「カムサハムニダ!」と、ぼくは叫びながら飛行機に乗った。

飛行機に乗ってる間、さっきのスチュワーデスがぼくに近づいてきて耳元でささやく。
「いいフレンドね。あの3人はあなたが戻ってこなかったら飛行機に乗らないって聞かなかったのよ」
返事できなかった。ぼくは前の列に座っていた3人にばれないように、毛布を頭から被った。

 

国内でも海外でも、遥か彼方でも近所でも、バックパッカーでもツーリストでも、そこは何だっていい。喜びを与えてくれる天使たちに出会えることが旅であると思っている。

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note by Maru

 


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